1.急に出現した「かちんこちん歩行」の原因は?

60代男性、半年前から左手の力の入れにくさがあり、約1週間前から急に両下肢に力が入りにくくなった。下肢脱力が進行し、歩行困難のため救急搬入された。提示された動画を参加者が言葉で表現すると、「wide base」「前屈」「両膝が曲がっていない」「やや突進様」といった声が挙がりました。

似たような動画を発見しました!

そう、医学用語で表現すると、おそらくspastic gait(痙性歩行)、spastic limbsと言われるようですね。片側性の麻痺(例えば脳血管障害)ではぶんまわし歩行が有名ですが、両側の障害ではぶん回せず両膝が曲がらない(というか大腿が挙がらない)に見えます。

これは脊髄疾患に特徴的な歩行のようで、脊髄損傷、脊髄症、ビタミンB12欠乏などとかなり疾患が絞ることが可能です。


提示された患者さんはその他両側下肢の腱反射の異常な亢進を認めました。さらに入院後膀胱直腸障害も出現、最終診断は固形癌(おそらく胸腺癌)の脊髄転移(頚髄)転移という診断でした。

言葉で言われるとぱっと浮かびますが、動画から、これは痙性歩行だ!という言葉は参加者からは挙がりませんでした。まだまだ、見て学ぶ必要がありそうです!

歩行障害の用語だけまとめてみました。それぞれで動画を引っ張ってくるとものすごいことになりそうなので、今回はどの用語に当てはめるかのみまとめておきます。

今回の症例では痙性対麻痺歩行spastic paraplegic gaitということになりますが、教科書だけ参考にしていると、両側ぶん回し歩行様にも見えてしまいますが、まったくぶん回していませんでしたね。前傾でひざが曲がった状態で固定され、歩隔が広く、ぺたんぺたんとサンダルをならしながらの歩行でした。

対麻痺歩行はぶん回さない!と覚えておきましょうか。

脊柱管狭窄彰はコモンな疾患なので、再度動画は見られるでしょう!

2.顎の震えが止まらない!

80代女性急に出現した顎の震え動画の提示。結局原因が分からなかったのですが、翌日には軽快していたようです。寒気だった可能性はありますが、検索するとパーキンソン病による顎の震えというものを見つけました。同じようなふるえです。


ちなみに第1回でもオススメされていたふるえの本はこれです!

3.顎を叩いたら震えが止まらない!

俱楽部内で紹介された顎の震えの別バージョンです。NEJMのpictureとして紹介されたこの動画は、「顎クローヌス」と呼ばれ、上位運動ニューロン障害で出現します。動画のケースは筋萎縮性側索硬化症(ALS)だったようです。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1809249

 


4.「手あて」でチュッ

顎シリーズ3つ目です。なんと偶然今回は口周りが多かった!

50代男性腰痛で動けなくなり来院した患者、背景に高血圧・統合失調症がありました。手をこすってみると、口がチュッとした動き!

これは「手掌オトガイ反射」と呼ばれる反射です。

▶方法

母指球筋を近医から遠位へ強く素早くこするこする。すると、口をとがらせた様なチュッとした動きになる。(感受性が高いのが母指球筋で、実は皮膚のどの部位でも起こりうるとの記載もあります)

 


▶病的意義

実は正常でも見られることもあるよう。何かに集中していると口が尖ることもあり、オトガイ筋のことを英語でmentalisと呼ばれる語源だそうです。前頭葉機能障害、パーキンソン病が有名ですが、水頭症、認知症、統合失調症などでも見られるようです。

と言うわけで、我々は普段見過ごしている可能性が高いと言うのが結論になりました。

次回動画俱楽部までの宿題①

『手あてでチュッ』の動画を撮影せよ!

5.「手のこわばり」を見たら叩いてみよ!

手のこわばりを主訴にリウマチ科外来を受診した患者さん。

リウマチ科を受診する患者が必ず膠原病とは限りません。かなり教訓的です。


筋強直性ジストロフィーに特徴的なミオトニア(筋強直症)はこの動画でも分かるように、しっかり握手をした後、離しても手が広がりません。

これは患者が「手のこわばり」として受診してもおかしくはありません。合わせて舌も叩いてみるといいかもしれません。

6.咽頭ドキドキはMullerだけじゃない!~さらに口シリーズが続く~

初めて聞いた所見の一つ。咽頭ドキドキサインは大動脈弁逆流で診られるMuller徴候しかない、と思っていました。しかもARでこの徴候が診られるのは滅多になく、レアフィジカルです。しかし、今回提示されたのは、動画がどこにも見つかりません。

頚動脈蛇行による咽頭拍動です。ただし、Muller徴候と違うのは片側性の拍動であるということです!

この所見が誤嚥と関連するのではないか、という研究がされていました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3205819/?fbclid=IwAR3ZF7HMMpW45GjHW4TSn6J98glC11i4UubVOEr6LidyI0jsYYGo1tZPMhE


さらに検索すると・・・咽頭違和感や嚥下時違和感を主訴に来院したという報告が散見されました。

喉の違和感を診たら探しに行きたいですね~!

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/89/1/89_1_63/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/85/8/85_8_1281/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/14/3/14_174/_pdf

7.拡張期雑音を診たら、これも!