2021.3.15-18.近畿大学6回生 加藤さん

近畿大学医学部6年の加藤正寛と申します。奄美大島へ行ってみようと思った経緯から紹介します。私は2年生、3年生の時に、途上国ベトナムの都市部やへき地(少数民族の村)の医療の見学に行きました。どこでも医療は必要とされており、とりわけ医療資源の乏しいへき地での医療に興味を持ちました。どのようにしたら医療を提供し、維持できるのかということを考えていました。それによってジェネラルな医師にも興味を持ち、さらにCOVID-19の影響もあり国内にも目を向ける機会が増えました。日本のへき地医療、とりわけ離島医療はどうなっているのか、今後はどうしていくのかということに興味を持ち、これから医師となっていく中で携わってみたいと思いました。

そこで、発明家トーマス・エジソンの名言であるタイトル“Vision without execution is hallucination”(「実行しない目標(ビジョン)は幻覚である」) のごとく、「離島の医療について実際に見てみなければ、始まらない!」という思いで、学生生活最後の春休みに奄美大島実習へ申し込みをしました。そして、3月15日から3月18日の間、名瀬徳洲会病院(奄美大島)と喜界徳洲会病院(喜界島)にて次のような実習・見学をさせて頂きました。

 

午前

午後

(移動)伊丹→奄美大島

→→名瀬徳州会病院着・平島先生 カンファレンス参加

喜界徳州会病院へ移動→→・平島先生 当直見学

・平島先生による教育回診

・平島先生 外来見学

名瀬徳洲会病院へ移動→→・救急(待機あり)

・先生方とのお話(待機時間)

・平島先生による回診

・小田切先生 産婦人科外来見学

・平島先生 外来見学

・手術(帝王切開)見学・小田切先生 レクチャー

・平島先生 外来見学(夕診)

・平島先生 レクチャー

・回診と病棟説明

(移動)奄美大島→伊丹

もちろん、実習中に身体診察をはじめとする医学的なことを学ぶ機会もたくさんありました。個々の身体診察に関しては平島先生の「フィジカルクラブちゃんねる」(https://www.youtube.com/c/フィジカルクラブちゃんねる)が充実していますので、奄美大島、喜界島での実習にて印象的であったところを中心に振り返りたいと思います。

 

百聞は一見にしかず

およそ1年前からのCOVID -19で多くの人の生活に変化があったと思います。そして、私自身も実習や授業のあり方が大きく変わりました。オンラインだけで実際に医療現場に行くことができない、実習中に診療科の先生とお会いする機会もない状況でした。だから、どの診療科が自分に向いていそうかさえわからない、決められない、そのような状況の人も多いと思います。COVID-19以前からも同じように、実際に見てみなければ、体験してみなければ、選択肢になりにくい、決めにくいというようなことがあると感じています。

 

実際に実習・見学へ行って目から鱗が落ちました。奄美大島に実習・見学に行くまでの奄美大島や喜界島での医療のイメージと、実際に奄美大島、喜界島にて実習した際のイメージは大きく異なりました。奄美群島の医療を支える名瀬徳洲会病院、離島の各島を支える喜界徳洲会病院のふたつを肌で感じました。その地域の医療を担っているという実感も、充実した生活ややりがいにもつながると感じました。そして今回の実習が、今後の離島医療を具体的に考える際の糧になると感じました。

全人的な医療

ヘリ搬送、専門家、検査、出産時の特別な対応等へのアクセシビリティ、COVID-19でもよく聞くECMOの有無など、やはり大阪とは環境が異なります。検査に関しても、何でもいつでもすることができるわけではありません。制約のある中で最善を尽くすためにも、しっかりとした身体診察やより詳しい普段からの変化への着目というような医師の根底にありそうな手あての医療が印象的でした。さらに、ヘリ搬送の可能性があることから、ヘリ搬送に対するきめ細やかな対応や意識、ヘリ搬送に対する判断といった普段考えることがなかった視点も実際に知ることが出来ました。

そして、診察中は患者と医師というその時だけの関係だけではありません。○○さんと○○先生というような関係性の中で患者さん1人ひとりを家族や住居環境をはじめ様々な背景やその人の歴史まで含めて全人的に見ながら、医療をしていくという姿勢がとても素敵でした。毎週の決まった曜日に外来をする応援の医師であれ、常勤の医師であれ、何年も続く関係性があると、外来でも○○さんの普段を理解しながら、普段との差異も意識するというような、普段からの関係性があるからこそ分かるプロフェッショナルな一面や確固たる信頼関係が構築されていることも印象的でした。

また、急性期のときだけでなく、その患者さんのアウトカムまでしっかりと見える形で責任をもって医療をしていました。そこから、治療を今後にも活かしていくことができる素晴らしい環境でした。

最後に

このような貴重な離島での医療見学・実習のきっかけや離島医療のお手本としてたくさんのご指導をしてくださった平島修先生、奄美大島で産科医としてこれまでのお話を通じて離島での医療のやりがいや大切さを伝えてくださった小田切幸平先生、実習環境の手配をしておもてなしをしてくださった田畑龍太様をはじめ、多くの先生方や関係者の皆様にお礼申し上げます。

また、この体験記が奄美大島へ実習・見学を考えている人への実習参加・見学への後押しとなれば幸いです。