2019.2.25-3.1.鹿児島大学3回生三島さん

研修医の先生方との実習

朝のHCUでのカンファレンスや回診、時間を作って勉強会で発表される研修医の先生方の姿は、疲れている日もありましたがとても誠実で印象に残っております。試行錯誤しながら治療を決定していくところや、患者さん一人ひとりに触れ、真摯に向き合う姿がとても印象的でした。患者さんを安心させるように手を握ったり、聞き取りやすいよう声を低くゆっくり話したりする姿を見て、平島先生が大切にされている「手あての医療」が研修医にもちゃんと伝わっているんだなと感じました。

外来実習

耳の遠いお年寄りでも声の周波数を調整して、聞き取りやすくする機器の導入を行っていました。スムーズに会話のキャッチボールが出来ており、患者さんも聞きたいことが聞けているようで満足げな様子でした。これも患者さんのことを想った医療のひとつだと感じました。患者さんに信頼され、体だけでなく心も癒やすことができるのが手あての医療、また医のアートの側面なのだと感じました。

訪問診療

喜界島で訪問診療に伺いました。どの患者さんも自宅でゆっくりと過ごされている様子で、とても和やかな雰囲気でした。患者さんが自分らしく生活できるお手伝いが出来るのは医師としても幸せなことだなと感じました。指導してくださった先生からは1分で患者さんについてのプレゼンを求められ、重要なことを簡潔にわかりやすく伝えることの大切さを学びました。私は徳之島出身ですが、島ごとに文化や生活に特徴があることに改めて気付き、それぞれの島に住む住民のニーズに応えられるようになりたいと思いました。

カンファレンス等

患者さんに会う前後に廊下で行われる議論が印象的でした。指導医や他の先生方からの指摘や提案、疑った鑑別から考えられる身体診察での所見や解釈などは臨床の現場であるからこそ緊張感が感じられました。日々の学習においても常に臨床現場を意識しながら勉強したいと思いました。朝礼では日野原先生の著書の一節を共有する場面があり、同じ医療に携わる者として共通認識を持つことが出来るのはいいことだなと感じました。患者さんの病む体と心に触れる”タッチ”のアートによって救われる患者さんがたくさん今回の実習で一貫して先生が実行されていたことを私もポリクリやクリクラ、臨床の現場で実行していきたいと思います。

施設見学

消化管内視鏡検査や産婦人科の妊婦健診などを見学させていただきました。設備はとても充実しており、先生がいればなんでもできるというような体制を保っているのはすごいなと感じました。研修医の指導にも熱心で、いろいろ勉強させてもらえるところが魅力的でした。産婦人科ではハイリスクの妊婦に胎児モニタリング(CTG)の貸出を行っており、離れていても胎児や妊婦の状態を把握することが出来る取り組みを行っていました。離島の周産期医療は緊急時に対処できることが限られているため、早め早めに対応をしていくことが大切であると学びました。先生のレクチャーやNCPRを見学させていただきとても勉強になりました。離島の周産期医療にかける熱い思いを受け継いでいけたらなとおもいます。

全体的なこと

実習では様々な患者さんが来られる中、「何が患者さんの幸せなのか」「どうしてあげることが正解なのだろう」ということを考えさせられました。腎不全が進行している高齢の患者さんに対して「どのように最期を迎えるか」ということをご本人さんやそのご家族にきちんと考えてもらうため、平島先生は予後を濁さずにお伝えしていました。医学的に考えればシャントを作って透析をするべき。一方でこの患者は高齢であり、残りの余生が透析をすることによって制限されてしまう。透析導入で命を延ばすことができるが、果たしてそれが患者さんにとって幸せなことなのだろうか。私にとってはとても難しい選択だなと感じました。患者さんにとってはこれが初めての話ではなかったようですが、予後をお伝えしたとき私は少しドキッとしたのを覚えています。患者さんやそのご家族は意外なほど落ち着いていたように感じました。これも先生との信頼関係の上で成り立っているのだろうと思います。前立腺癌末期でこれ以上積極的な治療は行わないという患者さんは「先生が診てくれているから大丈夫」と笑顔でおっしゃっていました。平島先生のような医師に診てもらえて幸せそうだなと感じ、同時に私もここまで信頼されて命に寄り添える医師を目指したいと改めて思いました。「どこか行くような医者じゃないので安心して相談して」とおっしゃった先生の姿はとてもかっこよかったです。寄り添うってこういうことなのかなと感じた瞬間でした。誰しもこの世に生を享けた日から、確実に死に向かって歩んでいきます。いつかは来るその日のために、医師として何が出来るのだろうか。命の在り方、死の存在を考えさせられました。これから先もたくさん悩むと思いますが、その度に患者さんと向き合って、一緒に悩んで、一緒に泣いて、一緒に笑って、少しでも「幸せだったな」と患者さんに思ってもらえるようなサポートができたらいいなと思いました。どの患者さんも先生に会うと笑顔になり、診察室を出ていくときには元気になっているようでした。’’Medicine is an art based on Science” と言われますが、先生が行う手あての医療がまさにこれを表しているのだと感じました。授業では学べない、医学の勉強だけしていても学ぶことの出来ない大切なことをたくさん学ぶことができました。

今回の実習では、平島先生をはじめ多くの先生方やスタッフの皆様に大変お世話になりました。実習に参加することが出来て本当に良かったです。

いままでの大学生活を振り返ってみると、私は医学以外のことに関してはあまり時間を割いてきてはいませんでした。浪人して親に迷惑をかけてしまった分勉強に集中しなければと、自分自身の勉強以外にやりたいことを我慢してきたように感じます。しかし、今回の実習で先生方の医療に対する思いや活動、行動力、感性に触れ、今踏み出さなければいつまでも自分の世界は広がらないなと感じました。医学だけでなく、音楽鑑賞や海外活動、読書、映画鑑賞など様々なことに挑戦または経験して、医師としても人としても大きく成長していきたいと思います。短い期間ではありましたが今回の実習で感じたこと、考えたことは私の財産になりました。先生方、スタッフの皆様、患者様との出会いに感謝してこれからも努力を重ねて参ります。ありがとうございました。